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第3話 剣を賜る ~アグリサイド~

Author: 光命
last update Last Updated: 2025-02-22 19:08:11

マリアについてくと、バカでかく煌びやかな扉の前に着いた。

廊下の天井も高いし、扉も大きくて当たり前か。

ここに王様がいるのだろうか。

「勇者様を連れてまいりました」

扉の前にたったマリアが近衛兵たちに話しかける。

扉の前に立つ近衛兵が大きな扉の取っ手に手をかけ、扉を押す。

そこには広い大きな間が広がっていた。

奥の方のこれまた豪華な椅子に座っているのが、国王だろうか。

国王の前につき、マリアが跪く。

それと同時に、俺の方に目を送る。

あっ、俺も同じことしないといけないのか。

慌てて、俺も跪く。

「勇者様がお目覚めになりました」

マリアがそう告げると、国王が顔を崩す。

「よく目覚めてくれた。私が国王のマルクス・アウレリウス八世である。

 勇者をせっかく召喚したのに、このまま死んでしまうのではないかと思った」

勝手に呼び出しておいて、勝手に殺されてしまったら、かなわない。

「貴方が、国王が俺を呼び出したのか?」

ちょっとムキになり大声で国王に話しかけた。

そして、つっかかるように話す。

「正確に言うと呼び出したのは私ではない

 ただ、私が命令して、召喚の儀式をしてもらったのだ」

俺の様子に多少ひるんだのか、弱弱しい声で国王が答える。

「勝手に呼び出されて、勇者と言われても困るんだが……」

さらにつっかかる俺。

国王が困った顔をして話し始める。

「確かにそれはわかるが、こちらとしても事情があってな」

今の状況を長々と説明しはじめた。

纏めると

まず、前任の勇者が150年前に魔王を追い詰めたが、討ち取るまでには至らなかった。

勇者たちは深手を負って帰還。

その後、しばらくは平和になった。

ただ、最近になり魔王軍が攻め込んで来るようになった。

魔王に対抗する手段は、この世界にはない。

異なる世界から勇者を呼び出すしかない。

前任の勇者もそうだった。

ということらしい。

勝手に呼び出されて、魔王と戦えと言われてもな。

でも戻る手段はなさそう。

覚悟を決めるしかなさそうだ。

「事情はわかった。

 こうなった以上は仕方ないのかな……

 で、この後はどうすればいいんだ」

その言葉を聞いた国王の顔がほころぶ。

「そうか。引き受けてくれるか。よかったよかった。

 では早速だが、シルフィーネ村に向かってほしい。

 魔物が増えてきているとの報告がある。

 そこの状況確認と魔王に関する情報を収集してきてほしい」

何の装備も準備もないのにもう出撃命令か。

「何もわからない、丸腰の、俺に、一人で行けと!」

半分キレたように国王に向かって言う。

「あいすまぬ。村までの案内はするようにと、馬車は用意してある。

 それと武器や防具については、この中から使えそうなものを選んでくれ」

国王がそう言うと、兵士たちが武器や防具を持って目の前に立ち並んだ。

「年代物だが手入れはきちんとしてある。どれでも好きなものを選んでくれ」

見せられたとしても、初めて見るんだし、良し悪しがわかるか。

こういうのはフィーリングで選ぶしかないかな。

並んでいる装備を眺めていると、変な声が聞こえてきた。

「……を選……ぶ……のじゃ……

 そ……この……剣……」

しっかりと聞き取れないような声が聞こえる。

その声に答えるように俺も言葉を発する。

「これか?」

そういいながら、ある剣を手に持った。

「そうじゃ、それじゃ。その剣じゃ」

手に持ったらハッキリと頭の中に聞こえてきた。

ビックリした俺は、目の前にいた兵士に尋ねた。

「お前、何か喋った?」

兵士はビックリした様子で、首を横に振った。

なら、この声はどこから聞こえてくるんだ。

でも、この剣、なんとなくフィーリングがいい。

「それじゃ、この剣を貰います」

他にもいくつか、防具などを見繕い、持っていくことにした。

それから王様からは

「あとは、こちらが準備金になる。足りないものがあったら買うといい。

 勇者殿、あとはよろしく頼んだぞ」

笑顔でこちらを見ている。

そう笑顔で頼られるのは悪い気はしない。

「どこまで出来るかわかりませんが、出来るだけ頑張ります」

と、つげて、大広間から先ほどの部屋に戻った。

「さて、どうしたものかな……」

部屋に帰り、椅子に座る。

ボソッとつぶやきながら、貰った剣を持ち上げて眺めてみる。

そういえば、さっき聞こえてきた声はなんだったんだろう。

誰かがアドバイスをくれたのかな。

そう思いながら、剣を隅々まで見ていると、突然声が聞こえてきた。

「でかしたぞ。よくワシを選んでくれた」

そして、剣の先から一人の女が現れた。

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    さっきのクロウとゾルダの話はなんだったのだろー『フーイン』とか『マオー』とか言っていたけどーきれいさっぱり無くなった砦の半分を眺めながら思い出す。あの二人はどう見ても知り合い的な感じだったよなー少なくともクロウはゾルダのことを知っている感じだったなー以前どこかで会ったのだろうか……でもあの怖がり方は演技だったのか本当だったのか。本当なら以前会っていて、ゾルダにコテンパンにやられたとかかなー「フォルトナ……? 大丈夫か?」アグリが心配して声をかけてくれた。こういうところは気が利くよねー「ボクは大丈夫だよ。 でも、この状態、どうしようねー」「そうだな。 どうデシエルトさんたちに報告したものか……」アグリは頭を抱えだした。まぁ、そうだよね。これだけスッキリとした状態になっちゃったしねーそう考えながらも、さっきのクロウとゾルダの話が気になっちゃう。「あっ、そうそう。 さっきのゾルダとクロウの話だけど…… フーインとか、マオーとか言っていたけど、あれは何の話?」アグリは慌てた顔で話し始めた。「どこまで聞いていた?」「うーん、そうだなー 一応全部聞こえてたけど、意味がよくわからないところもあったから」「そうか…… なぁ、ゾルダ。 話しても問題ないか?」宙に浮き満足そうに眺めていたゾルダにアグリは確認する。「ん? 何のことじゃ。 別にワシは隠しているつもりはないぞ。 もう聞かれたんだし、隠すこともないのじゃ」 思う存分、話してもいいのじゃ」「了解」アグリは確認が終わると、ゾルダのことを話しはじめた。元魔王であること現魔王を倒す目的が一緒だから共に行動していること王様から貰った剣にゾルダが封印されていることなどなど「えーっ、ゾルダが魔王だったの?」もしゾルダが怒ってクロウと同じようになったらどうしよー今までのこと、魔王に対して失礼じゃなかったかなーあのこともこのこともどうしよー大丈夫だったかなー急に心配になってきてびくびくしながら、アグリの後ろに隠れてみる。ゾルダは相変わらず不敵な笑みを浮かべている。「今のところは利害一致しているから。 何もしてこないよ……たぶん」アグリは苦笑いしながらそう答えた。確かに誰かれ構わず襲うのだったら、もう姿形もなくなっていただろなー。「てっきりボ

  • モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている   第39話 四天王クロウとの対峙 ~ソフィアサイド~

    いいぞいいぞ。その血気盛んなところ。ワシ好みじゃ。ちまちまとやるのも飽きていたところじゃったからのぅ。大将同士一騎打ちといこうじゃないか。クロウとやらは血走った目でワシを見て、なりふり構わず突っ込んできた。なかなかいいものは持っていそうじゃが……まだまだワシが本気出さなくてもよさそうじゃ。クロウとやらの突進を余裕を持ってかわす。「ドンっ」そのまま壁に突っ込んでしまったようじゃ。壁には大きな穴が開き、パラパラと周りが崩れてきておる。「本当にお前らは突っ込むしか能がないのかのぅ。 もう少し楽しませてくれないとのぅ」壁の中から出てきたクロウとやらに言い放つ。「お前は誰だー!! オレ様をクロウ様だと知っての事か」「おぅ、クロウとやらとは知っておるぞ。 そのうえでここに来ておる」クロウとやらはちょっと驚いた顔をしておる。いいぞ、そういう顔が見たいのじゃ。「なぁ、ゾルダ。 そうあまり挑発しなくても…… 今の目的はあくまでもフォルトナの救出だったんだからさ」どうやらあやつはクロウとやらが投げ出した小娘の娘を助け出していたようじゃ。「まぁ、固いことを言うな、おぬし。 ワシの目的はここで暴れることじゃからのぅ」「アグリ、ありがとー。 ゾルダ、ボクは大丈夫だから、気にしないでー」クロウとやらの方に視線をやると、さらに驚いた顔をしておるようじゃ。「ん? 今、この女のことをゾルダって言ったか? ゾっ……ゾルっ……ダ……」「ほぅ、ワシの名前を知っておるのか」ただ血気盛んな奴だと思っていたが、このワシを知っておるようじゃな。「でもなんでお前がここにいる。 封印されていたはずじゃ……」おっ、これはワシが封印された経緯も知っておりそうじゃ。単に倒すより、まずはワシがこうなった原因でも聞こうかのぅ。「ほぅ、封印したことを知っておるのじゃな。 ゼドはワシに何をしたのじゃ。 ワシと一緒にいたやつらはどこにいったのじゃ」「オレ様は何も知らんぞ。 ゼド様から聞いただけで、何も知らんぞ」クロウとやらは、目を激しく動かしておる。動揺しておるみたいじゃのぅ。もう少し脅せば、何か言ってくれそうじゃ。「ゼドからどのように聞いたんじゃ。 ほれ、はやく話せ」「オレ様はオレ様は……」クロウとやらは何を言い淀んでおるのじゃ。

  • モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている   第38話 人質の救出 その2 ~アグリサイド~

    フォルトナが先に行ってから、少しの時間が経った。合流地点の隠し通路の入口前で、フォルトナの帰りを待った。予定では人質が逃げてくるのを待って、フォルトナと合流。それからそのまま敵のアジトへ乗り込み一網打尽にする。そういう計画だった。しかしなかなかフォルトナと人質が出てこない。何かあったんだろうか。少し心配になりながらも、今は待つしかなかった。「おぬし、小娘の娘のことを心配しておるのか」ゾルダが俺の顔色を見たのか、話しかけてきた。「ちょっと遅いからな。 フォルトナの実力からすれば大丈夫だとは思うんだけど…… ちょっと抜けているところがあるし…… 失敗していければいいけど……」「そうじゃのぅ。 小娘の娘は調子乗りというかなんというか。 前も周りを見ずに突っ込んでいったからのぅ」たしかに。シルフィーネ村の北部の祠の時は大変だった。後先考えず走り出してシエロに捕まっちゃったし……「まぁ、あの時痛い目にあっているんだから。 今度は慎重にやっているだろう」言葉とは裏腹に、手のひらには汗が滲んできた。まぁ、心配は心配だしね。でも、信じて待つしかない。そんな会話をして待つも、一向にくる気配がない。さすがにこの遅さは異常だ。「なぁ、ゾルダ。 そろそろ本当にマズくないか」「確かにのぅ。 何かあったとみてよさそうじゃな」身支度をして、敵のアジトへ向かおうとしたところ……隠し通路の奥から足音と息遣いが聞こえてきた。「タッタッタッタッタッタッ…… ハァハァハァハァ……」徐々に音が大きくなる。こちらに向かってきている音だ。不測の事態に備えて剣を身構える。「ダンっ」隠し通路の扉が開くと、そこには女性と子供の姿が現れた。「ハァ、ハァ、ハァ…… あっ……あなたが……」息を切らした女性がこちらに話しかけてきた。「わ、わたしは…… リリアっ……とっ……申します。 このイハルを治める……デシエルト様の側近、エーデの妻です」この人がエーデさんの妻か。ということはフォルトナは人質の解放には成功したようだ。「初めまして、俺はアグリと申します。 あなた方を救出に参ったものです」その言葉を聞いてか、リリアさんはホッとした表情を浮かべた。「ところでリリアさん。 あなたを逃がしてくれた人は一緒に来なかったのですか?」

  • モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている   第37話 人質の救出 ~フォルトナサイド~

    アグリたちに先んじて砦まで来てみたけど……状況は母さんたちがある程度調べていてくれるしーまずはその時と変わってないかの確認かなーたしかこのあたりにあいつらも知らない隠し通路が……あーっ、あったあったーこれで中には簡単に忍び込めるんだよなーただ問題はここからなんだよなー人質がいるのが地下の牢屋でーこの隠し通路まで見つからずにどうやって連れて行けるか……もう少し調べてみないとなー辺りを見回してサササッと物影に行き様子を伺ってみる。この辺りは誰もいないみたいだねー。もう少し先へ行ってみよー注意を払いながら先へ進んでみる。前から誰か来たーさっと飛び上がって、天井へ身を隠す。「しかし、クロウ様も人使い荒いよな! 何日も何日もここで人質のお守りだもんな。 しかも外へ出るなだし」「そうだな。 俺もそろそろ限界だ」「クロウ様も今はここにいないし…… ちょっとだけなら外へ行ってもかまわないよな」「俺も行くぞ。 退屈でかなわん。 ここの見回りが終わったら行こうぜ」クロウの手下も大変そうだな―ここの周りは何もないし、確かに退屈だよねー同情はするけどねーただバカな手下でよかったよーこいつらが外へ出たところで、人質を連れ出せそーとりあえずこいつら以外がどこにいるかを把握しよークロウの手下の二人が通り過ぎたので、さらに奥へと進んでみた。奥の部屋や上の階など部屋という部屋を見て回ってみた。ベッドで寝ている者椅子に座ってうたた寝している者他愛のない話をしている者おおよそ緊張感とはほど遠い状況だった。たしか母さんたちが調べたときはこんなんじゃなかったんだけどなー時間も経ってダレてきたのかな?トップがいないのもあるけどねーでも、こちらにとっては好都合だしーこれは人質救出、楽勝かもねーそうなったら、ゾルダに褒めてもらえるかもねーちょっといろいろ考えているうちに、手下の二人が外に出て行ったようだ。さてと……人質を救出しに行こー案の定、地下の通路から牢屋まで誰もいなかった。これはすんなりと行きそうかなーそして牢屋の前に来ると人質の1人が話しかけてきた。「あなたはいったい……」「しーっ! まぁ、正義のヒーローってことにしておいてー ここから助け出してあげるよー」牢の鍵も大したことがなかった。苦労もせず

  • モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている   第36話 敵のアジトへ ~ソフィアサイド~

    あやつはなんであそこまで怒るのじゃ。たかが酒を飲んで、服を着ずに寝ただけでのぅ。だいたい細かいことを気にし過ぎじゃ。いちいちちまちまと……もうちょっとおおらかになれんのかのぅ。あやつに小言を言われた翌日。ワシたちは……えーっと……誰だっけ?なんとかってやつの家族を助けるために南にある砦を目指すことになったのじゃが…「うー、暑いのぅ。 暑いのぅ暑いのぅ暑いのぅ」「ゾルダ、うるさいって! 俺だって、誰だって暑いんだよ!」小娘の娘がおる所為で、剣の中には戻れずにおる。なんでこんな暑い思いをしないといけないのじゃ。起伏の激しい砂漠を登ったり降りたりで……それだけでも疲れるのにこの暑さだからのぅ……「もう疲れたのじゃ。 どこかで休みたいのぅ」「あのさ…… いいじゃん、ゾルダはさ。 移動魔法で浮いているのに、どこに疲れる要素があるんだ」「これはこれで疲れるんじゃぞ。 ダラダラと力を使うからのぅ」あやつは移動魔法は疲れないと思っているのじゃろうか……確かに身体としては楽じゃが、地味に疲れるのじゃ。いっそ一気に力を使った方が楽なのじゃがのぅ。「あーっ、暑いのぅ。 この服、脱いでよいか?」「頼むから外ではやめてくれ! ゾルダに羞恥心が無いのは分かったけど、俺が恥ずかしい!」「ボクも恥ずかしいからやめてよねー」人というのはそういうものなのかのぅ……正確にはフォルトナは人ではないが、あの種は人と同じような生態なのじゃろう。こんな布切れを着ている着ていないで、態度が全然違うのじゃなぁ。暑ければ脱ぐ、寒ければ着るでいいと思うのじゃが……「フォルトナ、あとどれくらいで着く?」「そうだねー あともう少しかかるかなー ほら、あそこに見える岩山のところだよー」「微かに見えるような見えないような…… あれは蜃気楼じゃなくて?」「ボクは目がいいからはっきり見えるよー」「俺はほとんど見えないよ。 暑さでゆらゆらしているし、幻にも見えるし」あぁ、あそこか。あやつには見えにくいかもしれんのぅ。距離はありそうじゃから、今しばらくかかりそうじゃな。「さあー、頑張っていこー」小娘の娘は楽しそうじゃのぅ。いつでも脳天気で、あまり考えていない気がするのじゃが…---- さらに1時間程経過しばらく歩いておったが……

  • モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている   第35話 なんで何も…… ~アグリサイド~

    昨晩は大変だった……ゾルダはいつものことながら、フォルトナも飲むなぁ……二人して盛り上がっていたけど、今のこの街の状況忘れてないかな。ちょっと心配だ。案の定、二人とも朝になっても起きやしないし……昨日ゾルダがフォルトナにどんどん酒を勧めるから、ほとんど話が聞けていない。だから、今日はしっかりと話を聞いて対策を考えないとと思ったけど……「おーい、ゾルダ、フォルトナ。 もう昼過ぎだぞ。 そろそろ起きてくれないか」隣の部屋の扉をノックする。「ん…… もう少し、もう少しじゃ」「むにゃむにゃ…… まだまだ足りないよー」なんだよ。寝ぼけているのか。「いい加減起きろって」バーンと扉を勢いよく開ける。「ホントにさー 眠いのは分かるけど……」まだ寝ているのか布団を被っているゾルダとフォルトナ。ここは……「秘技、布団はがしー」一気に覆っている布団をはがす。って、えー……「おっ……お前ら…… なんで何も着てないのー」「んっ…… 何でと言われてもじゃなぁ…… 確か、飲んで帰ってきてじゃのぅ……」「うーっ ……そんなの暑かったらだよー」「わっ、分かったから、とにかく着てー」もう目のやり場に困るから早く着てほしい。「なんじゃ、おぬしがなんで慌てておるのじゃ? ワシはおぬしに見られて困ることはないぞ」「むにゃ…… ボクは……えっと……」フォルトナは虚ろな目をして座り込んだ。目をこすって周りを見ている。そして、下を見た瞬間、目が覚めたのか、大きな声を上げた。「きゃーっ!」俺は慌てて扉を閉めて、外に出た。そして着替え終わるのを待つことにした。それにしても、暑いからって全部脱ぐかぁ。しばらくしてから様子が気になったので、扉をノックした。「コンコンコン」「もう服を着たか? 入ってもいいか?」「おう、もう着たぞ」「……うん、ボクも……大丈夫」着るものを着たみたいなので、部屋の中へ入る。いつもの姿のゾルダとフォルトナが居てホッとした。「あのさ、ゾルダには羞恥心というものはないの?」「なんじゃ、そのシューチシンというのは? うまい酒か?」「いや、そうじゃなくて恥ずかしくないのかってこと!」「全然じゃな」「ボクは恥ずかしかったよー なんで全部脱いじゃったんだろー もう恥ずかしい恥ずかしい恥

  • モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている   第34話 屋敷に忍び込もう ~???サイド~

    せっかく気づかないように近づいたのになー。ゾルダには分かっていたのかー。「もー、いつから気づいていたのー」「そ……そんなの、だいぶ前からじゃ。 ワシに分からんものなどないのじゃ」「そーだよね、さすが真の勇者だねー」「ん? 何じゃ、真の勇者とは……?」しまったしまった。ボクとしたことが。これは知られてはいけないことだったんだー。「ううん。 何でもないよー」「あれ? 何でここにいるの、フォルトナ。 シルフィーネ村を出るときに何も話してなかったし」それはあの時はここに来ることは決まっていなかったしねー。「まぁー、それはそれだから。 今回は母さんからの伝言を伝えにきたんだー だけど、なんか面白そうなことをしているから、ついてきたんだけどねー」「えーっ! いつから俺たちについてきていたの?」「えーっと、今朝からかなー 昨日には街に着いていたしー アグリたちを見つけたんだけどねー」「なら、なんでその時に声かけてくれなかったんだよ」「疲れていたのもあるしねー まぁ、明日でもいいやーと思って」なんせ追いつくためにだいぶ頑張ってきたからねー。ここまでだいぶ遠かったしなー。「朝また探して見つけたから、ついてきたんだけどー さすが勇者……じゃないや、ゾルダだねー」「そうじゃろう、そうじゃろう。 ワシじゃからな」「で、ここで何しているの? ボクも手伝おうかー」この広い屋敷の外でなんかやってみるみたいだったけどー。本当は伝言も伝えないといけないけど……まずはゾルダたちが何をやっているかに興味あるなー。「イハルが襲われているって話だったというのは覚えている? フォルトナ」「うん。 母さんが言っていたことだねー」「でもここに来たら、こんな感じで襲われた痕跡はあるけど、魔王軍が居なくてね。 それで、俺もいろいろ街で調べたけど……」アグリが話すには、魔王軍が撤退した後、領主の姿が見えなくなったらしい。あと真の勇者様……じゃないやゾルダも魔力を感じているみたいで。どうもここが怪しいと感じているみたいだねー。でも、なんか知らないけどうまく忍び込めないらしい。「それじゃ、ボクが行こうか? こう見えても、忍び込むの得意だよー」そういうのはカルムさんから一通り教えてもらっているしー。気配消してささっと行けると

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